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仕事と育児・介護の両立支援対策の充実に向けた法改正の方向性

作成者: 株式会社wiwiw編集部|2023/12/28 4:56:48

現在、厚生労働省の労働政策審議会 (雇用環境・均等分科会)では、20239月頃から、「仕事と育児・介護の両立支援について」という議題で議論が進められています。直近の議事録を見ると、法改正も含めたおおよその方向性が固まってきているようで、その中には、企業に新たな義務を課す内容も含まれています。

そこで今回は、議事録のポイントの紹介を通して、これからの両立支援について考えてみましょう。まだ法改正の内容や施行時期が確定したわけではありませんが、こうした方向性を知ることで、企業としても事前に準備や検討を進めることができるでしょう。

 

〇詳細は、労働政策審議会 (雇用環境・均等分科会)の資料をご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-rousei_126989.html

目次

検討の目的(目指す方向性)

議事録では、最初に、少子高齢化や人口減少の加速をふまえて、「誰もが充実感をもって活躍できることが重要」とし、そのためにどのような職場環境を目指すべきかが記されています。

・個々の労働者の状況や希望に応じた働き方を選択できる
・全ての労働者がライフステージにかかわらず仕事と生活を両立できる
・特に、男女とも育児・介護といった労働者の家庭責任や私生活における希望に対応しつつ、仕事やキャリア形成と両立できるようにしていく

1.仕事と育児の両立支援

育児との両立支援では主に、子の年齢に応じた両立支援に対するニーズに対応するための制度の拡充について示されています。

(1)
子が3歳になるまでの両立支援の拡充
テレワークの利用促進:
 両立支援としてもテレワークを利用促進し、事業主の努力義務とする

短時間勤務制度の見直し:
 柔軟な勤務時間の設定に対するニーズに応えるため、「16時間」以外の選択肢を用意することが望ましい

(2)
子が3歳から小学校就学前までの両立支援の拡充
・労働者が柔軟な働き方を活用しながらフルタイムで働くための措置を選べるようにする
 ⇒フレックスタイム制やテレワーク、新たな休暇の付与といった選択肢の中から、2つ以上の措置を講じ、労働者が1つ選べるようにする
 ⇒制度説明と取得意向確認のための面談を義務化

・所定外労働の制限(残業免除)を請求できる労働者の対象を、「子が小学校就学前」に拡大する

(3)
子の看護休暇制度の見直し(「子の看護等休暇」)
・感染症に伴う学級閉鎖等や子の行事参加(子の入園式、卒園式及び入学式を対象)にも利用できるようにする

・小学校3年生修了まで(取得日数は変更なし)

 

(4)定期的面談の実施や、心身の健康への配慮

(5)男性の育児休業取得のさらなる促進
取得率の公表義務を、労働者300人超の企業にも適用する(対象企業の拡大)

・取得率の政府目標(2025年までに30%)を大幅に引き上げる  ※参照:「子ども未来戦略」資料

 ⇒2025年までに:民間50%、公務員85%1週間以上)

 ⇒2030年までに:民間85%、公務員85%2週間以上)

 

上記の他、制度の活用をサポートする企業への支援として、育児休業や柔軟な働き方を可能とする環境整備を行う中小企業に対する助成措置を強化することが盛り込まれています。

2.次世代育成支援対策推進法

女性だけでなく「男女とも仕事と子育てを両立できる職場」を目指す企業の取り組みをさらに促進するために、一般事業主行動計画の策定・変更時について、次のような方針が示されています。

(1)目標設定
「男性の育休取得率」と「時間外労働の状況」など、子育ての両立に係る数値を用いて定量的に定めることを義務付ける


(2)盛り込むべき事項

両立支援制度利用時の業務の分担や業務の代替要員確保に関する企業の方針など、7つの新たな指針を示す

3.認定制度

男性の育児休業取得率の政府目標が引き上げられたことをふまえ、くるみんの認定基準も引き上げられることが適当であるとしています。

取得率の基準> (男性育休取得率/育児休業等・育児目的休暇取得率)
 トライくるみん  7%/15%  ⇒  10%/20%
 くるみん     10%/20% ⇒ 30%/50%
 プラチナくるみん 30%/50% ⇒ 50%/70%

その他にも、時間外労働に関する基準も変更となる可能性があります。

4.仕事と介護の両立支援

育児休業制度の個別周知・意向確認の仕組みを参考に、介護の両立支援においても、複数の内容が企業に義務付けられることになりそうです。

(1)個別の周知及び意向確認
事業主が、両立支援制度等に関する情報を個別に周知し、意向を確認することを義務付ける

(2)早期の情報提供の義務
40 歳のタイミング等の効果的な時期に、事業主が、労働者に対して、介護に関する両立援制度等の情報を記載した資料を配布する等の情報提供を一律に行うことを義務付ける

(3)雇用環境の整備の義務
研修の実施や、相談窓口などの中から、いずれかの措置を講じることを義務づける

5.個別ニーズの両立支援

育児・介護の他の両立支援のニーズについては、障害児・医療的ケア児を育てる親やひとり親家庭等への配慮について議論しながら、次のような内容について周知を強化するという方針が出ています。

・子に障害がある場合や医療的ケアを必要とする場合にも、要介護状態の要件を満たせば介護休暇等の制度を利用可能であること
・介護休業等に準じて、介護を必要とする期間、回数等に配慮した必要な措置を講ずる努力義務が事業主に課されていること

障害児・医療的ケア児に関する支援については、現行の要介護状態の判断基準は主に高齢者介護を念頭に作成されており、子に障害がある場合等では解釈等が難しいケースが考えられることをふまえて、今後さらに検討を進める必要に触れています。

最後に

ここでは主な要素をピックアップしましたが、さまざまな角度での検討の動きが起きていることがおわかりいただけたのではないでしょうか。まだ法改正の実施時期などは決まっていませんが、この議事録に記載されている内容は、いずれは施行され、企業に求められることになる可能性が高いと考えられます。制度設計や取り組みを検討する際には、ぜひこうした動向もふまえてご検討ください。

wiwiw(ウィウィ)は、DEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の領域を専門とするコンサルティングサービスを提供しており、行動計画策定に向けた調査や、制度周知の仕組みづくり、必要な研修(eラーニング、集合研修)の実施など、幅広いソリューションを提供可能です。取り組みにお困りの際は、ぜひお気軽にお声がけください

wiwiwは、2024年も多くの企業・団体の取り組みを支援してまいります。どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。


〇詳細は、労働政策審議会 (雇用環境・均等分科会)の資料をご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-rousei_126989.html