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有価証券報告書開示義務により加速する女性活躍

2023/07/11 11:15:14 / by 株式会社wiwiw編集部

皆さま こんにちは。女性活躍、ダイバーシティ&インクルージョン推進をライフワークにしているwiwiw(ウィウィ)の山極です。

 

人材を「資本」と捉え直し、人材の価値を最大限引き出すことにより中長期の企業価値を向上させる「人的経営資本」に高い関心が集まっています。しかも、それが女性活躍推進に関わっているから見逃すことができません。

そこで、まず、女性活躍・ダイバーシティ推進にかかわる「コーポレート・ガバナンスコード」改訂に注目したいです。これに関連して、金融商品取引法に基づく有価証券報告書の「人的資本」情報が開示義務になっていますので、その開示の具体例に触れます。さらに、金融商品取引法に留まらず、女性活躍に関する幾つもの法律においても、人的資本制度の開示が求められております。今回は、これらについてまとめてみました。

「コーポレート・ガバナンスコード」改訂および有価証券報告書における開示義務

政府は、2021年6月に上場企業が遂行すべき企業統治のガイドライン「コーポレート・ガバナンスコード」を改訂し、新たに「人的資本に関する開示・提示」と「取締役会による実効的な監督」を追加しました(図1)。

これに合わせて、金融庁は、男女格差の解消を進め、人口が減少する中で女性の労働参画を促す目的で、「女性管理職比率」、「男性の育児休業取得率」及び「男女間賃金格差」を公表している会社及びその連結子会社に対して、2023年度の有価証券報告書からこれらの指標の開示を義務付けると発表しました(図1)。
これらの情報開示の義務付けは、投資家に対し適切な投資判断をする上で有用なこと、金融商品取引法が重視する、投資家保護に欠かせないことだとの判断が働いた証左といえます。

 

図1 女性活躍・ダイバーシティにかかわるとCGコードと有価証券報告書への開示事項等

画像1-4

加えて、22年8月、政府は、金融庁とは別に人的資本状況の開示指針を公表して、2023年3月期から上場企業と一部非上場企業の約4,000社を対象に、有価証券報告書の開示義務内容に人的資本情報を加える方針を打ち出しました。なお、ここでの人的資本とは企業に属する従業員個人の知識や技能など企業の基礎的な資本を指します。


では、次にどのような情報を開示しなければならないのか、分野と項目を見てみましょう。

人的資本の情報開示が望ましい7分野19項目

人的資本の情報開示が望ましいとされる分野は、「人材育成」「エンゲージメント」「流動性」「ダイバーシティ」「健康・安全」「労働慣行」「コンプライアンス/倫理」の7つです。7分野には19の項目が紐づいています。
情報開示の具体例まで子細に検討しているところに、政府の本気度が垣間見えます(図2)。

 

図2 人的資本に関して開示が望ましい7分野19項目の具体例

画像2-4

金融商品取引法だけでなく女性活躍に関する人的資本事項の開示

併せて、金融商品取引法(有価証券報告書等)以外にも「女性活躍推進法」「育児介護休業法」「次世代育成支援対策推進法」等複数の法令においても人的資本に関連する事項の開示が求められています。(図3)

 

3 金融商品取引法以外の女性活躍に関する人的資本制度の開示

画像3


このように、人的資本経営とは、人的情報の開示の形式に留まるものではなく、しっかりと女性活躍推進を視野に入れた人的資本を活かす「実」のあるものになっています。

人的資本の情報開示が求められる背景とは

ところで、なぜ、人的資本の情報開示が求められるようになったのでしょうか。その背景について整理してみました。

2010年に入り、国内外の環境がより複雑化、複合化してきて、持続的成長に向けた長期投資の比重が増しています。そして、その投資に対して評価する投資家の目が有形資産から無形資産へと移ってきました。つまり、投資家は、これまで企業の有形資産である「モノ」と「お金」だけでは、企業の価値を測れなくなったということです。
年々「非財務情報」を判断材料とする「ESG投資」が投資家の注目の的になっているのも、同じ文脈から捉えることができるのではないでしょうか。

具体例をあげると、「モノ」と「お金」を持たずに事業を興したアメリカのIT企業は、技術のレベルや多様な人材の活躍によって、稼ぎ出す力においても世界のトップに位置付けられるまでに成長しています。その象徴は、スタートアップ企業の中から、市場評価10億ドル以上へ成長した”ユニコーン”企業です。必ずしも「モノ」や「お金」のある企業でなくても、大きな市場価値を生み出すことが可能になったと言えるでしょう。
企業を持続的に成長させ、市場価値を生み出したのは、そこで働く従業員が持つ知識や技能・経験などの無形資産によるものです。

今日のような、経済のグローバル化やビジネスの成熟化が進み、さらに、新型コロナウイルスの流行、地球温暖化に伴う異常気象をはじめとした気候変動、台風や地震といった災害など、予測が困難なVUCA時代。そうした時代では、どんな状況にも対応し新たなサービスや価値観を生み出すことのできる「人」の力が改めて見直されています。テクノロジーで解決できることは増えてきましたが、代わりに「人」でないと解決できない課題も、一層浮き彫りになってきています。

以上のように、もはや「モノ」と「お金」の情報だけでは、企業の資産を判断するには不十分だと考えられるようになり、その資源を客観視するために、「人的資本」にかかわる情報の開示が必要になってきているのです。

「人的資本」の重要性の認知が進まない、その理由とは

日本でこれまで、「人的資本」の重要性が認知されてこなかったのは、企業経営の根底に、日本的雇用慣行にかかわる「メンバーシップ型雇用」が続いているからと考えています。

日本に固有の雇用慣行は、新卒一括採用にはじまり定年までの終身雇用に、年功序列賃金制度と企業別組合が結合したものです。

日本的雇用慣行では、終生あるいは長期間、ひとつの会社に勤めることが一般的で、雇用の流動性が低く、雇用契約では、労働時間や勤務場所などが無限定で職務のアウトラインが曖昧です。会社で長く過ごすことが評価される考え方が主流でした。人材に投資するというよりも、従業員そのものを企業の資源として消費する「モノ」と捉える傾向が強く、単に人件費と見ていたのです。

このように、日本的雇用慣行に基づく経営では人材を「資源」として捉えているのに対し、人的資本経営では人材を「資本」とみなします。また、旧来は年功序列や終身雇用による人材の囲い込みが起きていましたが、人的資本経営では組織と人材が互いに選び合う自律的な関係へと変革していきます。

人的資本で生産性を高めるには

人的資本経営が持続的成長を約束する鍵は生産性の向上です。それを実現するための施策がダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの推進であり、女性活躍が一丁目一番地です。これは、女性のキャリア形成・女性の管理職・役員登用とワーク・ライフ・バランスとを同時に進めてきた、女性活躍の先駆けであるwiwiwの結論です。

従業員の誰もが活躍できる組織作りのためには、ダイバーシティ経営の土台にある従業員のウェルビーイングに注目すべきでしょう。  
ウェルビーイング(well-being)とは、世界保健機関(WHO)憲章において、「肉体的、精神的、社会的すべての要素で満たされた、持続的な幸福な状態」を指します。

幸福感とパフォーマンスの関係についてのLyubomirsky, King, Dienerの研究では、幸福感の高い社員の創造性は3倍で生産性は31%、売上は37%高くなるという、大変興味深い結果が示されました。
従業員が幸せを感じて仕事に情熱を持って取り組めるように促すための投資をすることで、資本としての価値が一層高まるといえます。

以上2023年は、有価証券報告書へ「人的資本情報」の開示が求められるようになるなど、女性活躍、ダイバーシティの推進がより強く求められる年となります。

 

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wiwiw(ウィウィ)は、2000年に株式会社資生堂で生まれて以来一貫して、企業・団体のダイバーシティ推進を幅広くサポートしています。資料請求や面談のご希望など、どうぞお気軽にお問い合わせください。

Tags: 女性活躍, ダイバーシティ推進

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